エイシンオンワード 神馬になったサラブレッド
上げ馬祭りで有名な多度大社に初めて行ったのは去年の9月のことでした。
祭りのない時期は子供のお宮参りか車のご祈祷くらいしか訪れる人もなく
神社は閑散としていました。
上げ馬祭りには祭馬が駆け上がる急坂を見ながらゆっくり横の階段を上がると
そこからさらに奥の本殿へと道が続きます。
その階段を登りきった左手の神馬舎にその神馬はいました。
どうせ張りぼての作り物かと思いながら近寄るとどうもそうではないらしい。
そこにいたのは素晴らしく素敵な本物のお馬さんです。
名を「錦山」というらしい。
しかもよく見るとどうもサラブレッドらしい。
真っ白な芦毛の馬体の神馬「錦山」様。
どうも気になる
どんな生い立ちの上にここにいらっしゃるんだろう。
今の境遇に満足されているんだろうか調べて見ることにしました。
「錦山」様のプロフィールが紹介されていました。
平成7年4月14日生まれ
父 ヘクタープロテクター
母 ダムグリス
サラブレッド 芦毛 牡
生産地 浦河
とあります。
彼は烈輝とした中央の重賞も走ったことのあるサラブレッドだったのです。
彼の競争馬名はエイシンオンワードといいました。
ちょうど同期に当たる馬では
スペシャルウィーク・グラスワンダー・エルコンドルパサーという面々がいる世代です。
彼はそんな中で2歳の小倉からそこそこの走りをみせ、
なかなか勝ち上がれなかったものの3歳戦では人気を背負いながらの2着を連発
するなど健闘し、5歳の未勝利戦2着を最後に競争馬生活を引退したようです。
エイシンオンワードの父ヘクタープロテクターはなかなかの良血でミスプロ系の
ウッドマンを父にもち 母系にもリバーマンや更には20世紀の名馬の一頭である
ダマスカスの流れを汲んでいます。
半弟に仏2000ギニーを制したシャンハイや欧州3歳牝馬チャンピオンのボスラシャムが
いますし 自身も不敗の八連勝で仏2000ギニーを勝った名馬です。
しかし日本で種牡馬になったものの国内でG1を取った馬はでませんでした。
早熟な短距離系の産駒が多かったようです。
エイシンオンワードも父に似て早熟で距離のもたない馬であったようで競争馬としては
結果は残せませんでしたが、母譲りの芦毛の白い馬体は神馬として好まれたようです。
そう言えば種牡馬失格の烙印を押されかけた芦毛の名馬メジロアサマも神馬のオファーがあったと聞きます。
とにもかくにも現在20歳になるエイシンオンワードはここ多度大社で立派に役目を果たしています。
白馬伝説があり、伝統の多度上げ馬祭りで賑わうこの地区は人と馬とがすごく身近な関係です。
大事に手入れされていると思われる綺麗な馬体や生き生きした表情は幸せ感が表れてました。
参拝客に愛嬌を振りまく彼の姿を、生まれ故郷北海道浦河の栄進牧場の方が見たら
何を思われるのでしょうか?
懐かしく微笑んでいただけたら何だか嬉しいです。