疾風のレクイエム その3
スポンサーリンク
こうして七歳まで走ったトウカイクインは、生まれ故郷の
岡部牧場で無事繁殖に上がることになりました。
クインを愛する内村氏はクインに当時一流と言われた
種牡馬たちを付け、生まれた産駒を全て自分の所有馬としてかわいがります。
中でもファバージとの間に生まれた三番仔のトウカイミドリという
牝馬には、特別の思い入れをもつ出来事がもちあがるのです。
三歳になって一勝を上げたトウカイミドリであったのですが
故障を発生、獣医も匙を投げる骨折であったのですが、
内村氏は獣医に懇願し予後不良の処置を一週間のちに
伸ばしてもらったのです。
スポンサーリンク
するとその三日後、寝たきりだったミドリは奇跡的に立ち上がり、
回復の兆しをみせたのです。
内村氏の熱意で命をつないだミドリは競争生命こそ絶たれたものの、
母と同じ岡部牧場で繁殖牝馬となることができたのです。
内村氏はミドリのために輸入されたばかりのブレイヴェストローマンを
つけることにした。優秀な戦績もさる事ながら、足元が弱かったミドリに
一年間で21戦をこなしたローマンの頑健さを加えることで、丈夫な仔馬が
生まれることを願ったのである。
ブレイヴェストローマンとの間に生まれたミドリの初仔トーカイローマンは、
内村氏の思いに応えるかのように、堅実に走り続け、そして牝馬三冠レースの
一つであるオークスをも制し、第45代のオークス馬となったのです。
悲運の名牝ヒサトモの血が見事によみがえった瞬間でした。
人々の記憶からも、由緒ある牝系としても消えかかっていた
ヒサトモの一族によるクラッシック制覇、ヒサトモのダービー制覇から
47年の歳月が過ぎていました。