奇跡の名馬 クラキンコ 2
クラキンコの父であるクラキングオーの父親はスズカコバンといいます。
スズカコバンの現役時代には三冠馬
ミスターシービーやカツラギエース、シンボリルドルフなどの
そうそうたる名馬がいて、彼自身は素質がありながら
重賞レースでは脇役にまわることが多い馬でした。
しかしそんなスズカコバンですが、
歴史的名馬の一頭であるマルゼンスキーを父に持ち、
母サリュウコバンの全兄は、オールドファンには懐かしい
天皇賞馬リキエイカン。
母系を遡れば小岩井農場の輸入基礎牝馬の一頭である
フロリースカップにゆき着く良血なのであります。
彼自身G1のタイトルは宝塚記念のみですが4歳から7歳と長く活躍した
成長力を買われ、マルゼンスキーの後継種牡馬となりました。
米血統色が強いためか産駒の傾向はダートに強い馬が多く、
地方競馬で活躍する馬を多くだしています。
クラキングオーもそんな産駒の一頭でした。
母クラファストレディーは名前からもわかるように倉見牧場の
自家繁殖牝馬で凡庸な成績の普通の繁殖にすぎませんでしたが
その母であるカネイゼーアは倉見牧場の先代が基礎牝馬として
残した馬で、いわば牧場はえぬきの2大牝系の一頭です。
(クラファストレディーの半兄のハクリュウボーイは笠松競馬場の
現役最高齢誘導馬でパクジイと呼ばれていました)
そんな種牡馬としては良血ではあるが二流の域をでなかった
父と牧場の大事な牝系ではあるが、
目立ったところもなかった母から生まれたクラキングオーも、
脚のけがもあり道営競馬の名馬ではありましたが種牡馬としては、
繁殖をたくさん集めるような一流どころではなく、倉見牧場の
自家用で使われるマイナー種牡馬の域をでませんでした。
一方クラキンコの母クラシャトルも同じく倉見牧場の
自家繁殖ですが、こちらもクラキングに負けないくらいの
活躍馬でクラキングオーの6年前の1994年に「北海優駿」を勝ち、
その後も地方を転厩しながら59戦15勝(重賞5勝)した
牧場きっての名牝です。
シャトルの父はワカオライデンといいます。
悲運の名馬テンポイントの甥にあたる馬です。
牝系をたどれば祖母が桜花賞馬であり、テンポイントの
母であるワカクモ、
さらにその母親クモワカは伝染性貧血の誤診の被害馬で
あるという数奇な運命をもった一族の出身です。
余談ですがワカオライデンの産駒であるライデンリーダーは
岐阜の笠松競馬所属でデビューから10連勝を記録し、
その後中央の桜花賞トライアルにあたるレースも勝利した
地方の名牝の一頭でした。
クラシャトルの母はクラネバダンサーというこちらも倉見牧場の
根幹牝馬の一頭で、北海優駿3着・北斗盃3着と健闘し
12勝したなかなかの成績を収めた繁殖です。
牝系を遡ると小岩井農場の基礎輸入牝馬であるウエットセールに
行きつく血統です。
(ただしウエットセール系の中央のG1馬はウエットセールの
あとすべての子孫をたどっても菊花賞馬バンブービギンただ
一頭であり繁栄しているとは言い難い牝系である)
倉見オーナーの真意はわかりませんが、倉見牧場2大牝系の出身の
クラキングオーとクラシャトル。自家生産の北海優駿優勝馬
どうしの夢の組み合わせで、はたしてどんな仔馬がうまれてくるのか。
ましてや予後不良になりかけた愛馬の血を繋ぐ仔馬が
どうしても見たかったのではないかと想像する次第です。
クラキングオーの種牡馬初年度唯一の産駒は
倉見牧場クラキングオーのキンの二文字をもらい、
女の子のコの字をつけてクラキンコと名付けられたのです。